聖地巡礼
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2010年11月 出雲巡礼

 【神在月の出雲5】11月15日 神迎祭の夜

 夕食後は、いよいよ出雲大社の年に一度の大祭である神在祭の最初のご神事、神迎祭が始まります。
出雲大社を西にまっすぐ行ったところにある、大国主神が出雲の国を天照大神に譲った国譲り神話の舞台である稲佐の浜に、今宵、日本中の八百万の神々が到来されるのです。

 

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 ( 稲佐の浜 )

 

 

 出雲大社付近から、暗闇の中を浜に向かって歩いていきました。
多くの人々がご神事に向い、足早に歩いていきます。
天候はあいにくの小雨模様ですが、時折雨が止んでは月が顔を出し、幻想的な夜となってきました。

 

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 ( 月夜の稲佐の浜 )

 

 

 浜に着くと、すでに大勢の人々が集まっていました。
ご神事がよく見えるところは人でいっぱいだったので、波打ち際の、あまり人がいないところまで進んでいくと、なんとかご神事の様子が見える場所に落ち着くことができました。
まだ、ご神事開始までは約一時間ほどあります。

 ご神事の行われる場所には、雨よけのテントが張ってあり、その中にいくつかの祭壇がありました。
また、テントと祭壇の前には、風よけのために小山のように盛られた砂山ともに、赤々と燃えるたき火がいくつも焚かれていました。

 

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( ご神事の会場風景 )

 

 

 雨はまだ降り続いていました。

 この神迎祭では、八百万の神々が来られた証として風が吹くといわれています。
そこで、この日はどうなるのだろうかと固唾をのんで見守っていると、ご神事が始まる夜7時前に、ご神事に合わせたかのように小雨は上がり、その上空にだけ、湧き立つ雲の向こうに、紺碧の夜空に輝く月が顔を見せたのです。
そこにいる皆がたいへん感動している様子でした。

 しばらくするとまた雨が強くなってきたのですが、それにもかかわらず、月は輝きつづけていて、こんなに雨が降り注いでいるのに、月が出ている光景は、とても珍しいものでした。

 そして、ちょうど儀式が始まる予定の7時頃に、強い風が海の向こうから吹いてきました。神職の方々があわててたき火が消えないように努めていました。
その直後に、ご神事が始まりました。

 

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( 高く燃え上がった火 )

 

 

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( ご神事 1 )

 

 

 後で聞いてみると、この強い風が、神々の到来・神風にちがいないと感じた人が多かったです。
別のときに吹いた風を神さまだと感じた人もいました。
どちらにしても、たいへん不思議なことだと感じられました。

 その後、祝詞の奏上、神々をお迎えするための木の枝でできた神籬(ひもろぎ)や、龍蛇神と呼ばれる海蛇の剥製などが運ばれ、神棚に捧げられるなどして、ご神事は進んでいきました。

 なお、大国主神は、大穴牟遅神(オオアナムチノカミ)とも呼ばれ、龍蛇の神の性質があり、その御使いは海蛇で、集まられる神々を先導するといわれています。
昔はよく稲佐の浜に海蛇が上がったそうで、特にセグロウミヘビが御使いとされています。

 潮が満ちてきているのか、波打ち際のわたしたちは、大きな波がくるたびに足がずぶ濡れになってしまいましたが、それもまた一興でもありました。

 砂浜でのご神事が終わると、すぐに、八百万の神々をお迎えした神籬(ひもろぎ)を白い布で囲って、何人もの神主の方々が、一路出雲大社へと行列をなして足早に進んでいきました。

 

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( ご神事 2 )

 

 

 参列者もいっせいに足早に後を追います。わたしたちもその行列に加わり、再び小雨が降る中を早足で進んでいきました。
皆がただひたすら、お迎えした日本中の八百万の神々の後を付いていきたいと追いかけて小走りに進んでいくのです。
皆が、目には見えない世界に合わせていて、厳粛な中にも熱気があふれ、静と動の交錯するたいへん濃密な時間でした。

 出雲大社の鳥居をくぐって、到来した神々をお祀りする神楽殿に入ると、すでに何千もの人が集まっていて、社殿は所狭しと人で埋め尽くされていました。
その中で、再びご神事が行われ、9時頃にすべてが終わって無事終了となりました。

 なんともいえず神秘的なご神事でした。
天空と、月と、海原が一体となって、まるで龍蛇神がいらっしゃるかのように、優しい雨が降り注いたり、止んだり、風に乗って八百万の神々が到来され、人々もその空間の一部になっていました。

 この稲佐の浜は、大国主神が、天照大神に出雲の国を譲って、現世の神から、黄泉の国の神になるとともに、厚く祭られるようになった神話の場所です。

 

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( 稲佐の浜 )

 

 

 上祐代表は、この神話の意味するところは、真の精神的・宗教的な成長=慈悲の深まりのために必要となる、権力欲などの現世に対する執着の超越なのではないかと語っていました。
政治的な王から、宗教的な王への進化ともいえるかもしれません。

 お釈迦さまも、生まれた直後、「偉大な王か仏陀かになる」と予言され、王子の立場を放棄し、仏陀となり、慈悲の心で人々の心を救いました。
イエス・キリストも然り(キリストとは古来、王を意味する)。

 大国主神の大社・古代の神社は、日本の寺社の建物の中で一番高い壮麗なものだったといわれています。
 さらに、天照大神の子孫である天皇家が、拠点である奈良の三輪山にも大国主神を祀るようになりました(崇神天皇の時代)。これが天皇家の最初の祭祀であり、よって、この神社=三輪山・大神神社が日本最古の神社ともいわれます。
天照大神を伊勢神宮に祭ったのでさえも、その後の時代のことです。

 

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( 大神神社 )

 

 

 さらに、出雲大社・大国主神の信仰は日本全国に広まって、その中で、旧暦10月は、出雲の大国主神の下に、日本中の八百万の神々が集まるという神無月・神在月の信仰が確立して、大国主神は、神々の中の神として、特別な存在になっていったのです。

 『古事記』の舞台・稲佐の浜での神秘の神迎祭りを通じて、神話の世界を肌で感じることができた夜でした。

 大社に集まられた八百万の神々は、この日から約一週間ほど出雲大社の中の十九社に滞在され、さまざまな縁、地域の縁、親子の縁、男女の縁結び、農作物の豊作、そして天候についてまでも神議りされるといわれています。

 

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( 十九社 )

 

 

 

 

 

 

( 2010年11月15日 実施 )

 

 

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